第八章:スカピー火山と菓子降る友情

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スヤスヤ村に到着した。 スヤスヤ村にはしんしんと雪が降っており、音は雪に吸い込まれ村は静かだ。 屋根の色は柔らかいパステルな色合いで雪の白と優しいコントラストを生んでいる。 どことなく村全体のんびりしていて、スヤスヤ村はのどかな雰囲気の村だった。 「そういやお兄さんは留守番か? 嬢ちゃんが来たってことは 」 「そうよ。置いてきた」 「ヨガとるドラゴンと火山で二人きりか。なんか絶妙に居にくいな」 タイムは気まずさを感じないんだろうか。 「あいつのああいう無神経でとんじゃかないところ尊敬します」 「良い意味で鈍感よね兄さん。ストレス少ないだろうし対人関係にも悩みなさそう。周りの人たちのストレスは知らんけど」 言いたい放題だった。 「すみません。スカピー火山に棲むドラゴンに呪いをかけた呪い師ってご存知ですか」 道行く村の人に聞いてみる。 「呪いって、ヨガの呪い?」 「はい」 「じゃあ“バジル婆さん”だね。村一番の健康オタクの呪い師さ。あの人ならそこの占い館にひとり暮しだよ」 パステルな屋根の中に一つだけダーク色な屋根を見つけた。 「……なんの用だね」 ビロードの奥から険しい表情の老婆が出てきた。 「あなたが呪い師のバジルさん?」 「んだ。そんでなんの用?」 「スカピー火山のドラゴンにヨガの呪いをかけたのは覚えてる?」 「物忘れするような不具合は起きてねぇな。間違いねぇ。アレをかけたのは私だよ」 「あいつの逆鱗が必要なんだ。私たち今流行ってる奇病の特効薬をつくるために各地で材料を集めてて……」 経緯を説明する。 「呪いがかかってると逆鱗が外せないらしい。そうすると私たちも材料が手に入らなくて困るんだ。どうか呪いを解除してもらえないだろうか」 「あのドラゴンが何をしたか知っとるか」 「若気の至りで村の財宝諸々盗んだんだろ」 「そうさ。スヤスヤ村の財宝をたんと盗んだ……悪事を働いてくれた」 顔をしかめるバジル婆さん。 「私の大切にしてた金のカメムシのオブジェも盗まれた」 「(金のカメムシってそれもう黄金虫じゃないか)」 「(黄金虫も緑色ですよ)」 ドラゴンの犯した罪よりカメムシのくだりが気になってしまう。 「とにかく駄目」 「ダメでした」 「ガーン」 ショックを受けるドラゴン。ブリッジをしていた。 「何しに行ったんだよお前ら!」「まあまあ兄さん落ち着いて。ほら、お土産。藁人形」 「いらねーッ!!」 「婆さん激おこだったぞ。そもそも何故そんなことしたんだ。よく考えたらなんだよ若気の至りって。ヤンチャで許される文化嫌いなんだよ私」 「待て! ちゃんと盗んだのには理由があるんじゃ」 ドラゴンは冷たい目を向けるダミ子たちに赦しを請うように理由を述べた。 「スカピー火山にはよく度胸試しで来る連中がいるんじゃ。だが毎回ワシが勝ってしまって、落ち込む彼らが可哀想ではないか。だから参加賞をあげたかったんじゃ!」 盗まれた人たちは可哀想じゃないのかというもっともらしいツッコミは野暮なので入れないとして。 「反省はしていると?」 「うん」 「でもどうするんです? とりあえずバジルさんのカメムシオブジェだけでも返してもらいます?」 「カメムシ?」 きょとんと間抜けな顔でドラゴンが復唱する。 「あーあれ前に来た挑戦者の参加賞にあげちゃった。一番いらなかったから」 グギギギギギッ!! 天罰! と云わんばかりヨガの難易度が急速に上がった。 「ギャース! このままでは整ってしまうーッ!」 「整え」 「致命的ですね。既に返せない財宝もあるということか……」 「並の謝罪じゃ済まんぞ。わかってるか私らにも迷惑かかってんだぞ。詰んだらどうするんだおい」 「ごめんなさい~ッ!」 「ねぇ。それなんだけど」 ダミ子たちの話を聞いていたオレガノが挙手するように手を挙げた。 「私いい考え思いついちゃった」
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