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「【紫雷の槍】!」
「【遠雷の渦】!」
轟音が鳴り響く。
一閃の光の槍が竜巻に吸い込まれ霧散する。
「【無限重力】!」
唸るような低い地鳴りがし、圧殺するような重力の塊がタイムを潰そうとする。
「【天壌の加護】!」
新たな魔法で重力を相殺。更に詠唱を続け反撃をする。
「【制裁の弾丸】!!」
針のように鋭い光の矢が幾千もマースの上に降り注ぐ。
「【姫騎士の盾】!!」
光のバリアを張り頭上の矢を弾き跳ばす。
「あまい!」
防ぎ終えたと思ったところで背後に忍ばせておいた残党の矢がマースを目掛ける。
「ッ!」
避けるも足場を崩しマグマの海へ身が倒れそうになる。
「【風神の息吹】!」
マースは咄嗟に足元に風の束を造りマグマ中に聳える岩石に足を置いた。
攻撃。防御。攻撃。避ける。攻撃。
両者のし烈な戦いが続いていた。
「すげー……これが魔法使いの戦いか」
「ううむ、凄まじいな」
ダミ子とオレガノはドラゴンに張られた結界の中で二人の戦いを見ていた。
「互いの力は互角。これはどちらが勝つかわからんな」
「なんか怖い。ほぼ決闘じゃん」
「まあ決闘かもね」
今度はオレガノが答えた。
「少なくとも兄さんは本気でマースに挑んでる。兄さん今度こそ勝てるかも」
「あれ意外。お嬢ちゃんはてっきりマースくんの応援すると思ってた」
「もちろんマースファイト! っていいたいとこだけど……それとこれは別。私たち一応ネムーニャの使命背負ってるし、個人の恋情より国の命運が優先じゃん。なんて格好いいこと言ってみたいけど」
オレガノは自分の兄の方を見て頬笑む。
「マースがいなくなってから兄さんずっと修行してた。『俺がヤツを越えるんだーッ!』って修行に手を抜いた日なんてなかった。そんな姿見てると、やっぱ兄さん頑張れって思っちゃう」
「あ、動きが止まった」
両者の動きに一旦区切りがついたのかマースとタイムは互いに睨み合っていた。
「マース、お前と決着をつけさせてもらう」
「久しぶりに聞いたな宣戦布告」
「懐かしんでる場合ではないぞ。 今の俺は前までの俺と違う。俺は最強の呪文を使えるようになったのだからな!」
「最強の呪文だと?」
「そうだ! ついに我が家系最大の魔法【古に葬られし呪文】を使う時がきたのだ!」
最大の魔法。その言葉にマースは唾を呑む。
周囲に静けさが走る。
無音の世界。
タイムは目を閉じ意識を集中させると【古に葬られし呪文】を唱えた。
「タンマ!!」
「……は?」
場が凍った。
絶妙にすっとぼけた間抜けなセリフに「ぶっ」とオレガノが吹き出す。
「タンマ! タンマ!」
タイムは叫び続ける。
「なんだ、あの呪文?」
アレが最大の魔法? 彼の切り札だって?
「そういえば聞いたことがある」
ドラゴンがタイムの呪文を聞いて唸り声をあげた。
「遥か昔どこかの国が巷で流行り使い倒され完全に旬を過ぎた言葉を“死語”と呼んだらしい。それを使ってしまった時の破壊力は凄まじいものらしい」
深刻な面持ちで解説をするドラゴンには悪いが。
「だ、ダサい」
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