第八章:スカピー火山と菓子降る友情

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「……う、」 「あ、目、覚めた?」 ダミ子は膝の上に乗せたタイムの顔を覗きこんだ。 「薬剤師……どうして……俺はいったい……?」 「殴り合いの果てに気を失ったんだ。まったくとんだ泥試合だったよ君たち」 「そうだ……マースは……? ッ……!」 「まだ動くな。治療中だから」 タイムの頬に消毒をあてる。痛みに顔をしかめつつも二の腕に貼られたそれに気づき、さらに顔をしかめた。 「なんか、身体中にダサいシールが貼られてるんだが……」 「私の開発したスペシャル絆創膏【トンでも絆創膏】だ。これを貼れば傷の治りが早まる」 腕と足、今顔に貼られた。身体のいたるところに微妙に可愛くないブタの絵が描かれた絆創膏が貼られている。 「こんな恥ずかしいもの貼ってられるか……とる」 腕に貼られた絆創膏を剥がそうとすると、 ブギィィィ…… ブタの嫌な悲鳴みたいなものが絆創膏から鳴った。 「う、なんて不快指数の高い音」 「剥がし対策だ」 「……そんなことよりマースは? アイツはどうなった」 「無事だよ~。兄さんといいとこ競るくらいのブタさんの数」 オレガノが歩いてきた。傍らには同じくブタの絆創膏まみれのマースが立っていた。先に治療を終えていたらしい。 「でも兄さんの方が重症かな? 倒れたのも先だったし」 「オレガノ……俺は負けたのか」 「ほんの僅差だよ。運良く僕の倒れる時間が遅かっただけだ」 タイムの問いにマースが答えた。 「私が魔法で治すって言ったんだけどマースが拒んだんだよね。これはただのすれ違いの喧嘩。反省を含めて自然治癒で治すって」 ね、と隣のマースに目配せをする。「……ああ」 「友達同士の喧嘩なら両成敗だろ」 「え……」 横たわるタイムの側にマースはしゃがみこむ。 「悪かったな。お前の気持ちに気づけなくて。僕、学院で友達もいなかったから喧嘩の仕方もわからなかったんだよ」 「マース……」 「お前の本音が聞けてよかった。タイムはあの頃から僕の友達でいてくれたんだな」 そう言ってマースはタイムに手を差し出した。 「フン。なんのことだか」 そう言いながらも差し出された手をとる。 取り合う手には、キャッチーなブタの絵。 「「ダセーペアルック」」 互いの姿を見て二人は吹き出すように笑った。 「……」 「タイム?」 タイムは白目を剥いていた。 「また気絶かよ!」 「勝負ありだな」 ドラゴンは交互に二人を見て勝敗を言い渡した。
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