第八章:スカピー火山と菓子降る友情

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「勝負の結果から、逆鱗は勝者マースに渡す。異論はないかね」 「ああ」 タイムの同意を聞きドラゴンは首肯くと、逆鱗をマースの手に渡した。 【スカピー火山のドラゴンの逆鱗を手に入れた!】 「たしかに」 「これで、残すは【イバラの森の魔女の涙】のみ……」 「あーあ。これでミッション失敗かあ」 「ネムーニャ皇帝がさぞ不機嫌になるだろうな」 「あー憂鬱~」 そうか。 逆鱗が手に入らなかったということは、もう秘薬を作ることは不可能。自動的にタイムたちのミッションはここで終わりを迎えるということだ。 なんともいえない気持ちになるダミ子の心情を読み取ったのかオレガノは大袈裟に手を挙げて言った。 「わーウッザ。もしかして私らに同情してる? 言っとくけど全然嬉しくないから。私たちに同情なんておこがましいのよ」 「まったくだ。おいグゥスカの薬剤師。俺たちに後ろめたい感情があるなら必ず秘薬(メザメール)を完成させることだな」 「タイム……オレガノも、二人とも、ありがとう」 「元気でな」 「ああ。タイムとオレガノも元気で」 「マース~! また会いに行くからね! 今度はミッションじゃなくプライベートで会おうね~!」 「近い。近いよオレガノ……うん。また会おう」 名残惜しそうにいつまでもハグをするオレガノを引き剥がし、タイムたちは火山から上空へ飛び立っていった。 「……行ってしまったな。騒がしいが、なかなか愉快な兄妹だった」 「はい。いなくなるとちょっと淋しいや」 「私たちの旅も最終局面だな」 残すのは一つ。 「【イバラの森の魔女の涙】……か。ここからが難解なんだよな」 「地図にも載ってないから後回してしまいましたもんね。どうやって探すか……」 「ん? イバラの森と言ったか?」 ドラゴンがその名前に反応した。 「【イバラの森】ならここからずっと奥へ行った北の森の更に奥にある森がそうだぞ」 「知ってるのか!?」 「ああ。塔までは行けなかったが」 「塔?」 「イバラの森の先に塔がある。そこに魔女は住んでるらしい。らしいというのも、イバラの森が出現した数十年前からワシは魔女の姿を一回も見たことがない。本当にいるのかも疑わしい。そういう意味では得体の知れない相手だ。用心しといた方がいい」 「なんだか怖いですね」 「世の中得体の知れないものが一番怖いからな」 最後の材料もこれまでと同様、きっと一筋縄ではいかないだろう。 それでも自分たちは何とか材料を手に入れた。乗り越えてきた。 「ここまで来たんだ。あともう少し、頑張ろう」 「はい。最後までダミ子さんをサポートします!」 いよいよ、最後の材料集めが始まる。
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