第九章:イバラの森の魔女

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ドラゴンの背に乗り、ダミ子とマースは全知の森へ向かった。 「よう。久しぶりじゃのお」 「呑気に挨拶してる場合じゃねー!」 優雅にドクダミンPを飲みながら二人を迎えた久々の精霊にチョップを入れる。 「ごふっ何するんじゃ!」 「あんたあのレシピ嘘っこじゃねぇか! なんも効かんどころか世界が眠り始めてるぞ!」 「はあ? どうゆうことじゃ」 ダミ子は今起きている現状を精霊に伝えた。 「バカな、妾の特効薬の効果が効かないなんて」 「全然全知じゃないじゃんあんた」 「なんたる言いぐさ! そのレシピで完成した薬で永眠病(スリーピング・ホリック)にかかった者は目を覚ましたんじゃろう? 妾のレシピは正しかったんじゃ」 「じゃあどうして起きた途端また寝ちゃったんだよ! それどころかグゥスカ王国なんて私たち以外全滅だぞ!? 一瞬起きたどころか被害は拡大してるんだよどういうことだ!」 「ひゃう~ほっぺたつまむな~」 「ダミ子さんどうどう」 「すまない」 祖父が眠りダミ子も僅かに焦りが表面上に出てきていた。 「正確には、薬は効いたが新たに眠り病を追加された、しかもさらに強力なもので、広範囲に……といったところか」 ダミ子たちの数歩後ろに佇んでいたドラゴンが口を開いた。 「メザメールは確かに永眠病に効いた。しかし永眠病がそれをさらに上回った。このままではイタチごっこだろうな」 「久しいな。全知の精霊よ」とドラゴンは精霊に目を向けた。 「お主はスカピーの……事態はよほど深刻なようじゃな」 「え? お二人は知り合いなんですか?」 初対面とは思えない二人(二匹?)の話し方にマースが聞く。 「「うむ」」 精霊とドラゴンは首肯く。 「遠い昔の旧友じゃ。お互い人間に興味がなく人間界との繋がりは稀薄だったんじゃが……お主が協力するとは思わなんだ」 「いろいろとあって借りができたのだ……ヨガとか」 「ヨガ?」 「そ、それよりっ」 ダミ子供が二人の間に割り込む。 「それはメザメールに対抗して病も強度を増したということか!?」 「薬剤師なんだろう。抗原抗体にワクチン……ウイルスとのイタチごっこはよくある事例ではないか」 「でもおかしいですよ」 次にマースが口を挟んだ。 「セージ殿……患者がメザメールを摂取し目を覚ましてから新たな眠り病に上書きされるのは一瞬でした。いくらなんでも早すぎる。まるで、それをわかっていたかのような反応だった」 「反応?」 「はい。僕は、まるで病に“意思”があるように感じたんです……」 「“意思”だと? 永眠病に?」 「はい」
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