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「ちなみにセージ様がグゥスカ王国で永眠病の初の病人らしいです。ついにこの国にも患者が出てしまいました」
「うん」
「他人事ではなくなりましたね」
「しかも婚約者だしなぁ」
「ダミ子さん……どうかお気を強くもって」
いくらズボラで無感動、無神経さが目立つダミ子でも、自分の婚約者がいつ目覚めるかわからない奇病に伏したら落ち込むだろう。
マースはどう慰めていいのかオロオロしていると、その気遣いも無駄になるくらいダミ子はケロっとした顔で一言。
「そのうちどっかの国が治療薬を開発してくれるだろう」
マースはずっこけそうになった。
よろける助手を冷めた目で見ると、ダミ子は椅子に座り足を組む。ちなみに椅子は爆発のダメージにより斜めに傾いているのでダミ子も傾いている。
「なにをオーバーなリアクションをしてるんだ君は」
「いや、思いきり他人事だなって……ダミ子さんの婚約者なんですよね?」
「焦ってセージが目を覚ますのか? 治療薬が飛んでくるのか?
否、こういう時こそ気長に待つのが大事なんだよ 」
「さいですか……」
「そう」
綿のはみ出る椅子にふんぞり返る斜め姿勢の薬剤師。
「まだまだ青いねぇ若者よ」
「うぅ、ダミ子さんだって若者でしょ」
マースを子供扱いするダミ子だが、彼女もまだ齢二十四の若者だ。
そう、まだ二十四。
今はまだ、と言っていられる。
だが……
「ダミ子さん、気長に待ってて大丈夫なんですか」
「何が言いたい?」
ダミ子は小首を傾げる。
先ほど同僚に無意味だった可愛さアピールだがこの青年には効果がある。上目遣いで見つめるそれに「うぅ」とちょっと照れていた。私の助手可愛い。
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