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桜田門
『相変わらずいい仕事してんなぁお前んとこ。それプリントしてこっちにくれるか』
「もう用意ができてます。都内の一軒家を借りていますが、夜の夜なかに素面の男どもが二十人ほどぞろぞろと出てきたそうです。先週の金曜の夜ですね」
これは別件で片山を追ったという折原が証言した。軽々しく捜査の内容を漏らすはずもないが、警察官らしく最後まで見届けた執念には頭が下がる。
「詐欺師集団とか怪しい新興宗教みたいなものも考えられますが、当たりっぽくないですか」
『うーん、片山大輔つながりか。二十人ねぇ……それが同一人物だったらドンピシャかもしれんな。まだ報道には下ろしてないことがあるんだが』
「ほぉ……教えてもらうことはできますか」
『電話ではちょっとあれだが、ホトケさんは複数に暴行されたんじゃないかと考えられる。そのための証拠隠滅だろう。惨いもんだ。あとは会ってから話す。今本庁なんだが動けるか』
「ええ、大丈夫です。車で近くまで伺います。着いたらまた連絡します」
もう一本火を点けた煙草を揉み消した。
「所長、いまじゃなくてもいんですけど」
待っていたように、席を立った敦也が事務机を回って歩いてきた。
「どうした?」
「ちょっと相談に乗ってもらいたいことが……」
敦也があらたまった顔をして立っている。口調も真剣だ。今日は朝から元気がないと思っていたが、きっとその相談事のせいだろう。
調布を動き回って片山大輔の情報を掴んできたのは敦也と奈津紀だし、木之元にとっても大事な子たちだから相談を持ちかけられて無下にもできない。その奈津紀は昼だと店が混むからと早めの昼飯に出かけた。
「わかった」木之元はあごを引き、立ち上がって肩を叩いた。「後で聞こう」
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