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強行突破
「いやらしい笑い方だな」市川が眉をひそめた。
「たしかに、職質かけたくなる顔です」
「よし、これはもらうぞ。ガサイレの令状は難しいか。なにせ被疑者を確保してないからな。これからふたり呼ぶから、すぐに案内できるか」
「捜索差押許可状なしの強行突破をしますか」
「おいおい、俺を幾つだと思ってるんだ、もうじいさんだぞ。無茶をぶっこいて飛ばされたのを忘れたのか。それができるのは木之元、腕利きの探偵であるお前さんだ」
「わかりました、こちらも呼びます」
携帯をつかんで外に出た。
「奈津紀、これから動けるか。敦也はいるか」
『どっちもOKです』
「敦也の尻に乗せてもらって、桜田門の近くまで来てくれ」
速かった。十五分で二人は現れた。
「奈津紀のおっぱいは快適だったか」
敦也は笑おうとしたが失敗した。相談事があるといってたのをうっかり忘れていた。顔つきは相当深刻だ。
「このまま乗せていきますよ、リンダ」
覆面パトのトヨタ・アリオンに三人が乗り込み、木之元はミニクーパーのハンドルを握った。奈津紀がしがみついたニンジャを先頭に、六人は六本木通りを進んだ。
ニンジャが止まり、敦也がグローブの指先を横に上げた。ここが調布の家を扱っている不動産屋なのだろう。バイクを降りた奈津紀は敦也に寄り添うように立っている。
相談ごとの詳細までは聞いていないだろうが、敦也の元気がないのは目に余るほどだ。
「行方不明ですか」
丸い黒縁メガネに頭のてっぺんにチョロっと毛を生やした不動産屋のオヤジは、ちいさい目を思いきり身開いた。
「えぇ。捜索願では警察が動いてくれないので、私どもに依頼が来たんです」
慌てた様子の不動産屋のオヤジを車に乗せて、アクセルを踏んだ。
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