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あのオーストラリアの306号室の匂いの正体は単純に色々と揚げた後の油の匂いだった。その匂いが玄関の独特な匂いと混ざり、306号室になったのだ。
そして、もう一つの匂い。
強いて言うならゴムと卵。その匂いの元は揚げ物にお好みでかける、あのタルタルソースだったのだ。ゴムと卵、そう考えた私は、少しどうかしているのかもしれない。
あのタルタルソースの匂いをゴムと卵、なんて表現するなど、食べる気が失せるではないか。
匂いの推測を少し後悔しながら、かばんを置き椅子に腰をかけた。
時間はもう9時になる。外は、街灯とポツポツと光る他の家の明かりしか見えない。
冬だと改めて感じさせられた空気の冷たさと夜の暗さを味わいながら家に帰り、匂いの推測をしながらリビングへ行き、窓から横殴りの雨と風をみて、夕飯を食べる。
なんて平和だろうか。トイレのついでにスマホをイジり、天気予報を調べた。雨は明日までにはやむらしい。
お願いだから、水溜りはつくらないでほしい。ビショビショの靴下の上に学校指定の靴、なんてたまったもんじゃない。明日は晴れてほしい。
そんなことを考えながら、トイレをすませると、お母さんが私の前に立って笑いながら言った。
明日の授業参観、何時くらいがオススメ?と。
前言撤回。私は思った。
明日は土砂降りになって母が授業参観に来なくなれ、と。
雨になれ!!!
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