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「彼女はね、此処…○○工場の△□部門の経理の、椎名葵ちゃん。わたし、何度か社員研修で一緒になったことがあってね。」
『そうなんですか…。』
静かな口調で、大澤さんは話してくれた。
椎名葵(しいなあおい)さんは、経理部所属。
昨年の春、別の支社から、○○工場に配属になったとか。
若いけれど、冷静な判断力と、丁寧且つ的確な仕事ぶりで、職場では一目置かれる存在らしい。
「ただね……。」
『ただ…?』
「人付き合いが苦手みたいなのよー。コミュニケーション力っていうの?それがね、ちょっと…。イイ子なのよ、何度か話してみると。でもね……とっても不器用な子なの。」
『そう…なんですね。』
“なるほど。
だからさっき、大澤さんは「本人的には頑張った」って言ったのか…。
頑張って、具合の悪いわたしに話し掛けてくれたんだなぁ?”
『あの……。すみません、大澤さんの名前をお借りして、椎名さんに声掛けてもいいですか?』
「それは別に構わないけど…。」
『ただ話し掛けるより、その方が安心してもらえるかな?…って思って。椎名さんに、あの時のお礼、きちんと言いたいんです。』
「分かった…。きちんとお礼…言ってあげて。葵ちゃんも、喜ぶと思うわ。」
“よし!
今度はわたしが勇気を振り絞る番。
頑張るぞー。”
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