291人が本棚に入れています
本棚に追加
/297ページ
わたしがはじめて、あの人の存在に気付いたのは、まだ春先の、電車の中だった。
4月、朝7時過ぎ。
いつものように、慌てて電車に乗り込むと、目線の先に、はじめて見る女性が座っていた。
膝丈のシンプルなスカートに、スプリングコート。
座っていても、脚の長さと綺麗さは一目瞭然。
ナチュラルメイクに、髪はツヤのある黒髪ストレートで、片方を耳に掛けていた。
文庫本を広げ、熱心に読み耽っているようだ。
“な、何…この感じ⁉
心臓が、やけにうるさいんだけど…。
どうした、わたし?
何が起きた??”
手すりに掴まりながら、チラチラとあの人の様子を伺ってしまう自分。
これが、わたしとあの人との出会い。
今思えば、わたしがはじめて一目惚れした瞬間だった。
最初のコメントを投稿しよう!