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その日に限って、わたしはいつもより薄着だった。
薄手のコートに、マフラーはナシ。
手袋も、持っていなかった。
暖を取る為に階段を登り移動するのも、今のわたしにはかなり酷で…。
わたしはただ、その場でジッと電車を待つしかなかった。
頭はボーッとして顔はホカホカしているのに、首から下は寒くて、ガクガクと震えが止まらない。
俯き、身体を丸めるようにして、どうにかやり過ごす。
すると、
「あの……大丈夫ですか?」
ゆっくり顔を上げると、心配そうに首を傾げ、わたしを見下ろす、あの人がいた。
『……。』
わたしの様子を伺うと、今度はしゃがみ込み、目線に合わせてくれた。
「寒い…ですか?」
『……寒い…です。』
どうにかわたしが応えると、彼女は立ち上がり、ベンチの左側に腰掛けた。
“わたし、幻覚が見えてるのかな?
あの人…だよね。違う??
どうしよう、別の意味も含めて苦しくなってきた…かも?”
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