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「よかったらどうぞ…。」
『えっ、あの……。』
彼女が差し出してくれたのは、未開封のカイロ。
「今、開けます…。」
『あっ、いや、その……。でも…いいんですか?』
「予備ですから…。」
『あ、ありがとうございます…。』
彼女は、袋を切りカイロを取り出すと、両手でガシガシと揉んだ。
そして、
「ポケットに…。」
『ありがとう…ございます。』
わたしはカイロを受け取ると、すかさずコートのポケットに入れた。
「……。」
『……。』
「あっ!手袋も、よかったら…。」
『えっ?いえいえ、さすがにそれは…。』
「どうぞ……。」
『じゃあ、遠慮なく…。』
わたしは、差し出されたアイボリーの手袋を受け取り、遠慮がちに両手に嵌めた。
「……。」
『凄くあったかい…です。』
「よかったです…。」
彼女が、はじめて微笑んだ。
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