気付くとき

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自分の人生で、冒険ってものをこれまで選ぶことは一切なかった。 容量悪いこともしない。 堅実だけをモットーにしてきたぐらいだ。 そんな俺が この先、どうしたいのか。 ふと、考えた時、アイツと仕事してたときが真っ先に頭に浮かんでくる。 それが答えだと思った。 伊達に独身を貫いてきたわけでない。 貯金と投資信託で積み重ねてきたものをざっと計算して、結構なんとかなると思った。 マンションのローンは…まぁ、それはそれで。。とりあえず、フリーランスと掛け持ちしながらやるか。 今頃、泣きベソかいて、空回りしてそうだな。 勢いだけはあるんだけど、計画性が薄いからなぁ… でも、諦めないだろう。絶対に。 それが、アイツだから。 ふぅ…息を吐いて、決意した。 思い立ったが吉日なんて言葉、今までスルーしてきたはずだったのに 「部長、お話があります」 気付けば、口と身体が勝手に動いてた。 そんな自分に、なんだか少し笑える。 そっか、 わくわくするってこういうやつか。 季節は夏に差し掛かろうとしていた。 ちょうど、昼メシ時で、どうせなら、まず一緒に腹ごしらえでもと思って牛丼を二つテイクアウトした。 お世辞にも外見は綺麗とは言い難いマンションだったが、リノベーションされているらしく 入口を過ぎると、ちょっとした扉とかモダンテイストを取り入れている。 さて、207号室。 ここだ。 アイツはどんな顔するだろう? インターフォンを真っ直ぐに押した右手の人差し指。 旅はこれから。 -ピンポーン 扉の向こうに、待ち望んだ景色があるはず。 -2年後- ある日の業務後、この会社に来た昔話をしていたら アイツから珍しく出た言葉。 「それって、相当わたしのこと大好きってことですね!愛されてんなーわたし」 冗談ぬかせと、笑い飛ばそうかとも思った。 でもまぁ、もういいよな。 俺もいい歳だし。 アイツも、随分と大人になったし。 大人同士、きっと割り切ってやっていける。 誤魔化してもどうせいつかバレるんだったら そろそろ、オープンでいい。 この結果が、どう転んでも、覚悟は出来てる。 アイツは、絶対、どんな形でも俺と繋がってる確信がある。 だから、もういいよな? 「そうだよ。今更知った?」 なぁ、瑞季 一回きりの勝負に出るよ。 END
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