気付くとき

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あれは、入社から4年目ぐらいのことだっただろうか…。 いつか、自分で会社を立ち上げて、自分の趣味を仕事に活かしていきたいと、アイツが飲みに行った時に時折将来を語るようになっていた。 その目は真っ直ぐで、前を見ていた。 もっともっと先のことだと思っていたが、 それは突然やってきた。 2ヶ月前には、退職の意向を示してから、あっという間に退職日を迎えてしまった。 諸々の片付けが終わり、上司や仲間への挨拶が一通り終わった後、俺のデスクの前までやってきて 「松田さん、本当にお世話になりました。」 真っ直ぐに目を合わせて、綺麗なお辞儀をする。 7年間営業をやってきた重みが伝わってくる様だった。 いつの間に、こんな自信に満ち溢れた顔をするようになったのだろう。 まだまだお子様だと思っていた女子が、年相応のヘアメイクとファッションで、すっかりビジネスウーマンになってたとは。 「おぅ。まぁ、がんばれよ」 気の利いたことは言えなかった。 それでもアイツは一切の淀みない笑みで、はっきり頷いたんだ。 最後に、もう一度 「沢山、勉強させていただきました。ホントにありがとうございました」 とびきりの笑顔で。 彼女は会社から巣立って行った。
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