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「節のバカ!!」
「そんな怒んなよお、通学が楽しくなる有益な情報得られただろ?」
「どこが!?」
「この自販機は割と当たりが出る」とか「途中のバス停で降りる、近くの女子高の生徒を沢山拝める」とか「あのコンビニは少年ジャ●プが紐で括られて売ってないから、月曜の朝は最新号の立ち読み可能」とか。最後は「あ、ほら。この道、なんとぺんぺん草もあります」とネタ切れも甚だしい紹介までされた。
最寄駅から高校まで、充分歩いて行ける距離だと聞いていたのに、随分遠いなと思っていた。
――この男、相当回り道をしてくれていたらしい。
お陰で気づいた時には予鈴の10分前で、こうして校門を目指して2人して朝から猛ダッシュしている。
「初日から遅刻とか、ほんと、絶対笑えない…っ」
「ある意味インパクトあるけどなあ」
「やだよそんなインパクト!」
「おー、よく声出るじゃん。リラックスしてきたな」
何を呑気な。けたけたと焦りよりも楽しさを乗せて、息切れもせず進んでいく節を背後から睨んでいると、私達の隣りを突然、風が走りぬけた。
「――――臨!!!!」
「…は?」
直後、節の大きな声に身体を揺らした人物が急ブレーキをかけて、訝しげな声と共に自転車を止める。
「お前、救世主か!?ちょっと後ろ乗せろ!」
「……なんで。嫌なんだけど」
「いや俺じゃなくて、珠杏のこと乗っけて!」
「は?」
まるで節とは違う低く平らな声を出した男が、節の指差した、つまり後ろで息を切らしている私の方角へ振り返る。器用に自転車に跨ったまま、険しい表情を浮かべた男と視線がばっちりと交わった。
白いワイシャツに身を包む男は、小さな輪郭の中に高校生にしては既に完成され過ぎたパーツが綺麗に並んでいる。冷たくも見えるその表情に、思わず身体が強張って肩が上がった。
「……誰」
節と同じデザインのエナメルバッグを斜めがけしていて、「この人も野球部なのかな」と思う前に友好的とは言い難い問いかけを投げられた。
「俺らと同じクラスの1年6組、宮脇 珠杏ちゃんです!俺の幼馴染です!」
私が何か答える前に、ニコニコと節が説明してくれてしまった。恐る恐る視線を戻すけど、目の前の男は全く表情が動かない。なんか、ちょっと怖い。
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