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「…なに?保城、知り合いだったの?」
「全く」
直ぐ後ろにいる保城 臨が即答で否定していてまた、ムカついてきた。いや確かに知り合いでは無いのかもしれないけど。でも全く無関係でも無いだろ、とツッコミたくなって堪える。
「初めまして、私、1年6組で委員長してます。筑波 洋です。今日から来るはずなのに遅いから職員室行こうとしてたの」
「あ、ごめんなさい…」
「何どした、道にでも迷った?」
「えっと、そうですね。そんなとこです…」
「まじか」と口角をきゅ、と上に持ち上げる筑波さんは、同い年に見えないくらいに大人っぽい。肌も白いし綺麗で羨ましいなとまじまじ見つめていると、真っ直ぐ視線がかち合った。
「…それで?」
「え?」
「さっきの会話聞こえてたけど。どうする?とりあえず、おしとやかキャラでいってみる?」
「え…!?」
ふと微笑みながら尋ねられて、驚きに満ちた反応をしてしまった。そこそこ大きな声が廊下に響いて咄嗟に口元を覆う。
「キャラ作るなら別に止めないし見守るよ?でもなんか既に前途多難そう」
「……、」
「あ、おしとやかだったら、こんな気軽に話しかけられるのもウザい?」
「……あの、私が悪かったです。おしとやかとか無理です。全然話しかけてください…」
頭を垂れて情けなく言うと、楽しそうな筑波さんの笑い声に、背後からの嘲笑が混ざる。
犯人が誰かは流石にもう分かる。というか角度的に保城 臨は、彼女が私の背後から近づいているのに気付きながらこちらを挑発してきたのだと分かって更に腹立たしい。
「良かった、こっちも素の宮脇さん知りたいしね?ちなみに私は委員長を名乗りつつ普通に授業サボるのも上手いです。今も宮脇さん気にかけるフリして授業抜け出してきたし」
あっけらかんと伝えられて、それこそおしとやかな第一印象が、随分既に崩れた。でもそれを全く気にする必要が無いと言わんばかりの屈託のない笑顔で手を差し出される。
「ようこそ1年6組へ。更に言っておくと、もう節から死ぬほどうちら、"珠杏ちゃん"の情報聞いてるから」
「…え…」
「幼稚園でも小学校でも割と男勝りで、男子泣かせて来たとか、頭良くて中学受験したとか、漫才するならボケというよりツッコミ、とか?」
あの男、プライバシーというものを知らないのだろうか。でもどうでも良い情報を嬉々と話す様子も簡単に想像出来て頭痛がしてきた。
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