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「え、風邪?」
"うん。鼻がずっびずびなんです。これでわかった?珠杏ちゃん"
「なにが」
"馬鹿でも風邪は全然引くんですよね"
「馬鹿なんだから、さっさと寝なよ」
"幼馴染が冷たいッッ!つか、今日月曜だから分かってる?"
「…なにが」
"ちゃんと少年ジャ●プの最新号、教えたコンビニで読んでから行け!?"
「馬鹿なの?というか節の連絡が遅いから遅刻しそうだし、今日はいつもと違う道で行ってみようかな」
"おいこら待て馬鹿、何を愚かな!"
「節にだけは馬鹿って言われたくない。放課後差し入れ持ってくから、ちゃんと大人しくしてなね」
"ありがとう!?でもちょっと待て珠杏…!"
何故か慌てた声を出す男との通話を容赦なく切る。この男、どんだけ漫画を私に読ませたいんだと思うと朝から少しだけ笑えてしまった。
『節の幼馴染なんでしょ?』
『節って昔からおバカなの?』
――初登校の日。クラスに入って自己紹介を終えると、初日から遅刻をしたにも関わらず周りはとても温かかった。そして「はい、馬鹿です」と節に関して素直に答えると、すかさず突っ込んで輪に入ってくる男のおかげで、私は随分と呼吸がしやすかった。
『こんなしっかりした幼馴染きたら、臨ちゃんいよいよママ卒業じゃん』
『うるせえよ』
『臨、拗ねないで!?お前はいつでも俺のマイベストフレンドだから!!それになんてったってバッテリーだしな!』
『うざい暑い』
抱き付こうとする節を引き剥がす素っ気ない男――憎き保城 臨は、どうやら今まで、節のお世話係のような役を担っていたらしい。「入学した時からなんでかあの2人、タイプ全然違うのにすんごい仲良いのよ」と、筑波さんこと、よーちゃんが教えてくれた。
いや、というかその前に今後、私が代わりに節のお世話係になるのも嫌なのだけど。
『つか、臨パパと珠杏ママの2人体制で良いんじゃない?』
『たしかに』
『え、絶っ対に嫌です!?』
クラスメイトの無邪気な提案に思い切り否定をしてしまった。やばい、とそこで思っても既に遅い。
『…こっちのセリフだわ』
訪れた沈黙と集まる視線に冷や汗が流れると、こちらを見向くことさえなく、私の隣の席の男から、冷淡に言葉が吐き出された。
おまけに何故、私はこいつの隣の席なんだとまた腹が立ってきた。
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