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『いやいや、俺ホラーとか怖いの無理なんで』
『……』
『珠杏さあ、寂しいこと言うな。俺だってお前に助けられてること沢山あんだよ。小2の時は、身体小さい俺を虐めてくる奴らに代わりに怒ってくれたろ、俺は感動したね』
『……お、怒ったというか、脅したというか』
『たしかに。"亡くなったお前のお爺ちゃんの正三さんが直ぐそばでお前の愚かな行いを見て怒っていらっしゃる"とか真面目なトーンで言われたら普通にこえーわ』
『そうだよね』
ふ、と思わず昔を思い出しながら少し空気を揺らすと節が私の髪を撫で付ける。
『…あれがきっかけでお前、余計噂されること増えたし。ごめんな』
どうやら私の幼馴染も、私に対して負い目があったらしい。「もう忘れたよ」と笑えば、節は眉を八の字にしたまま力無く微笑んだ。
◆
――そうしておバカで優しい幼馴染は、私に何故か高校までの通学路は、頑なに回り道のルートを授けようとした。
「みんなが通る通学路には、沢山、"居る"んだね」
さっきあの道へ足を踏み入れた時の"嫌な感じ"は、まさに私が見えてしまうものの所為だった。時々、姿を目にするもの達の中にはこちらの心にまで負荷をかけてくるような、あまり質の良いとは言えない種類の魂も存在している。
あの場所は、その負荷があまりにも大きかった。
「……あの道が怖いって、有名なの?」
「普通の奴らは知らない」
自転車を漕ぎ続ける背中に問い掛ければ、無愛想だけど一応返事が返ってくる。見えない人達が使う分には、何も問題無い通学路なのだろう。
「…節は、どうして分かったのかな。霊感とか全く無い筈なんだけど」
「知るか、野生の勘だろ」
そんなバカな。
でも怖いもの知らずなあの男を思い浮かべると、もはやそんな気もしてきてしまう。
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