2.その回り道で、悔しさの昇華

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「そうだ、今度の予選見に来れば?どよーびだし」 ノートにペンを必死に走らせていた節が、思い付いたように大きな声を出す。ビー玉をはめ込んだような瞳が、窓からの日光に照らされて透き通っている。 「そっか。いよいよ予選始まるんだよね」 「2年生バッテリー、自分で言いますがなかなか頑張ってるんですけども!」 「すごいね」 節は昔からずっと野球が好きだ。ポジションが捕手なのも昔からで、それは高校の野球部に入っても同じらしい。 ――そして、保城はピッチャーとして2年生にも関わらず地方大会の予選でスタメン入りを果たしていると以前聞いた。 当然練習量も増えて、朝練も始まって。節と一緒に登校することは無くなったけれど私は約束を守って、あの回り道を毎日使っている。 「まあ臨が凄いから、ボールいつも受けてる俺もおこぼれでベンチ入りしてるだけだけど」 「へえ良いじゃん、行こうよ珠杏。"お前は黒板消しだけしてろ役立たずめ"とか言われたら保城もキレるでしょそりゃ。謝るチャンスかもよ?」 「そ、そこまで酷いことは言ってない…」 先程の失言を、どこから聞いていたのか突如現れたよーちゃんに指摘され、その場に項垂れる。 「ごめんごめん」と軽い謝罪で頭を撫でる彼女は、どうやら本当に週末の試合に付き合ってくれるらしい。 「節、頑張ってね」 「さんきゅ、まあ俺は試合は出ないと思うんですけどネ!あとその可愛い笑顔で臨ちゃんにも同じことを言ってあげれば良いと思います!」 「うるさい」 「まー!この子もツンデレなんだから!困っちゃうね本当に」 「節、どうでもいいけどあんた字汚すぎでしょ」 「それほどでもねーよ」 「褒めてないんだわ」 よーちゃんからの容赦ない感想にも、けたけたと笑っている節の笑顔は、いつ見ても明るくて。「少しだけ素直になってみようか」という気にさせてくれるから、いつも不思議だった。
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