記念番外編「"ハッピーラッキーボーナスポイント"」

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 それから数週間後、午前中の授業の休講が重なって急遽シフトに入った月曜日の早朝。  既に書籍コーナーに陳列が完了した最新号の少年ジャンプの一冊を手に取った。そして「立ち読みを防ぎたいなら紐で括るなり、本にテープを貼って対策をすれば良いのに」と至極真っ当な考えが浮かぶ。  不良系高校生に自ら関わるなんて御免だ。店長に後で相談するか、とそこまで考えた時、背後から視線を感じた。振り返ると、半袖の白いワイシャツ姿の青年がじっとこちらを見つめている。  その顔には、「漫画を読みたい」とありあり書かれていた。店長が言っていた高校生は、絶対にこいつだと根拠を並べるまでもなく直観的に思う。そしてビー玉をはめ込んだかのようにまんまるで、透き通った大きな瞳と対峙していると、何故か不思議と毒気を抜かれていく。 「あー、今週、どの作品も胸アツ展開ですよ」  それは、ほぼ無意識のうちだった。焚き付けてどうすんだともう一人の自分がツッコミを入れている。  目の前の彼は、瞬間的にぱっと花びらが開くように表情が明るくなった。  そして「読んでも良いですか‼」と弾んだ声で尋ねながら、ニカっと左上の八重歯を覗かせ、少年のように笑った。  誘われるかの如く手に持った漫画を差し出す自分に気付いて――――成程、これは確かに“強敵”だ、と悟った。 
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