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「いや~校外学習、一層楽しみになっちゃったな」
「私は節と同じグループなのが一層不安だよ」
「嬉しいくせに、素直じゃないんだからあ」
「――――すみません。会計、電子マネーでお願いします」
未だに軽妙なやりとりをする二人とは別の低く平らな声が聞こえてきた。視線をずらすと、後ろから無表情のまま、こちらに支払方法を告げる青年が居た。
「うわぁ臨! え、なんで!? そして何、奢ってくれんの!?」
「前にチョコ買ってもらったろ。その分返す」
「おお、いつの話⁉ お前ってば、律儀なイケメンだなあ~~~~」
「痛い、叩くなバカ」
ぱしぱしと腕を叩かれた臨君は、眉間に皺を寄せながらも速やかにお会計を済ませる。
「せ、節! 私も後でジュース奢る。いつもの自販機行こう」
「えええなんで!? 特別待遇すぎてびっくり!」
「色んなお礼」
「え。俺、珠杏になんかしたっけ?」
「分かんないなら良いの。今日は、私が頑張って当たり出すから」
「……おい馬鹿。あの自販機、そんな簡単に当たらねえから。お前じゃ無理」
「ちょっとあんた、やる気削ぐようなこと言わないでくれる? あと馬鹿って言うなバカ」
「え、待って。臨ちゃん、あの自販機で当たり出るか試したことあんの? 想像したら可愛いんだけど、どうしよ」
「うるさい」
もはやじゃれ合いに近い掛け合いをしながらコンビニを後にする三人の背中をじっと見つめてしまった。
高校生って、あんな眩しかったかな。
そこまではるか昔の話でも無いのに、俺にはもう手の届かない程遠い煌めきを感じて、橙色の夕陽に照らされる彼らに目を細める。
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