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「……店長、まあまあ疲弊してます俺。就活全滅したらフリーターで雇ってくれますか」
「やだよ」
「まさかの即答」
在庫のチェックリストが挟まった見開き型のバインダーをパタパタ弄ぶ店長に、軽い口調で拒否されてしまった。面接に落ちてくらうお祈りメールよりショック。
「存分に悩みながら、先ずは沢山自分の足で歩いておいで。歩いて歩いて、それでもピンとくるゴールが見つからなかったら、その時は改めて面接してあげる」
賑やかな高校生達が立ち去って店に客は居ない。流れる店内用ラジオの声や音楽がやたらポップで、全く店長のくれる言葉とマッチしない。
「僕は"まだ"、本井君の逃げ道にはならないよ」
愉しそうに笑った店長は、全部分かってるのかもしれない。
「辛い」「辞めたい」「しんどい」そう呟きながらも本当はもう少し頑張りたいことも。
でも頑張るには、一人だけの力じゃ足りなくなってきてることも。
「まだ」なんて付けてるけど、もうそれって何かあったら俺の逃げ道になってくれるってほぼ言っちゃってるし。
こんな風な返事が来ることは全く予期してなかった。油断した。絶賛、メンタル疲弊中で込み上げそうになるものを誤魔化すように視線をずらして、やたらと無愛想な「ありがとうございます」をなんとか呟いた。
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