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「……節」
「ん?」
「昨日、クラス会だったんだよ」
真っ直ぐ見つめて伝えると、ぱちぱちとあどけなく瞬きを繰り返した男は、それからふにゃりと表情を崩す。
「あーそうだよなあ、行きたかったわ」
「みんな節に会いたがってた」
「だろうな、俺ってば常に人気者でお困り申す」
「……何その変な言葉。来れば良かったのに」
「馬鹿言うな珠杏、こっちは忙しいの」
「私らが暇みたいな言い方しないでくれる?」
すかさずツッコミを入れると、またけたけたと反省の色が見えない楽しそうな笑い声が、いつかの通学路に木霊する。
「ほらオバチャン、そんなちんたら歩いてたら辿り着く前に日が暮れる!!」
「節が元気すぎるんだよ、もうこっちは汗だくだよ」
「おい情けないぞ、宮脇 珠杏!!!お前の本気はそんなもんか!」
「…声でか」
パンパンと手を叩いて熱血コーチのように私を鼓舞してくる男にうんざりしつつ視線を投げる。きらきらと輝く笑顔には、やはり汗ひとつ見えなかった。日焼けした小麦色の肌も健康的で張りがあって、私とはまるで違う。
「――節」
「ん?どした」
「……なんでも、ない」
「相変わらず変な子だな君は」と、失礼な感想を告げた節に伸ばそうとした手を直前で引っ込めて、再び歩き出した。
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