放蕩息子の復活

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 男は目を覚ました。サイドテーブルのショットグラスは空のままだった。 「夢か・・・」  その時、電話が鳴った。病院からだった。 「すぐに来てください!息子さんが意識を取り戻しました!」  男は電話を置くと、タクシーを呼んで病院へと向かった。息子は意識を取り戻していた。担当医が言った。 「昨日はABRの反応(注 聴力に反応する脳波 脳死の判定にも使われる)がなかったのですが・・・」 「あいつは耳が不自由で、補聴器がなければ聞こえません」  息子は目を開いていた。人工呼吸器は外されていたが、気管切開されている。話すことはできなかった。父と子はじっと見つめ合った。男は息子の手をそっと握ると、病室を後にした。
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