24人が本棚に入れています
本棚に追加
男は目を覚ました。サイドテーブルのショットグラスは空のままだった。
「夢か・・・」
その時、電話が鳴った。病院からだった。
「すぐに来てください!息子さんが意識を取り戻しました!」
男は電話を置くと、タクシーを呼んで病院へと向かった。息子は意識を取り戻していた。担当医が言った。
「昨日はABRの反応(注 聴力に反応する脳波 脳死の判定にも使われる)がなかったのですが・・・」
「あいつは耳が不自由で、補聴器がなければ聞こえません」
息子は目を開いていた。人工呼吸器は外されていたが、気管切開されている。話すことはできなかった。父と子はじっと見つめ合った。男は息子の手をそっと握ると、病室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!