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もう少しだけ、一緒にいたい。
私は本当はどこまでも一緒にいたいと思った。君の横顔が泣き出しそうなら、君を抱き締めたいし。
君が許すなら、この想いを伝えられるのに……。
「お、花菜!」
その声に私の胸の鼓動が速くなる。
「お、おつ」
「お疲れ! なんだ? お前、今日学校サボったんだな?」
「サボりじゃないよ、本当に風邪ひいちゃってさ」
「なるほど、んで心細くなって俺に会いに来たのか」
「違うって! 薬買いに行って、たまたまだよ!」
「はは、そんな否定しなくても……」
君はそう言うと、私から目をそらした。横顔がやけに寂しそうに見える。
「……じゃあ俺行くわ、約束あっから」
「うん……」
「……花菜、俺さ」
「うん」
「……ま、まぁ、お大事にな」
私は咄嗟に君のシャツの裾を引っ張った。
「待ってよ、はっきり言いなよ」
「……また、今度言うわ」
「ずっと忘れられないんだよ、私は……君のことが、だから」
「……やっぱり俺に会いに来たの?」
「……うん」
「じゃあ、もう少しそばにいてあげるよ」
「え?」
街の喧騒と胸の鼓動が私の中で交差していた。
私はもう少しだけ、一緒にいたいと思った。
君はそっと私の手を取った。
「ありがとう」
暖かい風と、月の光が私を優しく包み込んだ。
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