爽やかに舞う風に乗せて

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今日もまた放課後になると、決まってあの中庭へと訪れる。 舞踏会が終わっても来年の舞踏会のためだと、今から練習している風舞の姿を見かけた。 こちらに気づいた途端、一旦踊るのを止め、思いきり笑って手を振ってくれる。 嬉しくなって、振り返し、息を弾ませたまま風舞の前へと来る。 すると、風舞は春の日差しのように穏やかな微笑みで、こちらへと手を差し伸べた。 「さ、お手を」 ごく自然とその手に取ると二人は踊り始めた。 あの頃とは比べものにならないぐらい上手くなった佐久来は足を踏むこともなく、風舞と息ぴったりに踊る。 暗くなるまで二人は休むことも無く踊り続ける。 爽やかな風に乗せて、舞う。 二人だけの輪舞曲、開幕──。
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