爽やかに舞う風に乗せて

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右手を胸に、左手を差し伸べた仕草に、その台詞。そうだ、間違いない。 何も言えず突っ立っていると、「さぁ、お手を」と微笑して促される。 もう、受け入れるしかない。ここで立ち去っても、後の全校生徒からの痛い視線に当てられて、残りの学校生活を過ごしたくない。 左足を少し前に出し、少し曲げた右足を内股気味にぎこちなく下ろし、ジャケットの裾部分をつまみつつ、頭を下ろす。 「よろ、こんで」 緊張でつっかえつつも、恐る恐る手を伸ばすと、ぐいっと引っ張られる。 「わっ」と小さな悲鳴を上げる佐久来の腰に手を宛てがうと同時に、曲が流れ出す。 直後、二人を中心に周りにいたうさぎに扮した生徒達が一斉に踊り出す。 あっと驚く光景に気を取られていると、「こっちに集中して」と小声で言われる。 前に視線を戻すと、あの時と変わらない穏やかな表情の風舞が見ていた。
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