第1話 放浪楽師

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 しばらく進むと、道の両脇に白い天幕が連なり、その下で人々が店を出していた。果物や野菜、魚や肉などを購入する地元民らで賑わいを見せていた。 「珍しい? 街出身なら当然か」  興味深く周囲を見回すクレイドに、レオンスは求めてもいない反応を示した。  クレイドはゴホンと空咳をして視線を逸らす。 「なぜ、街出身だと?」 「見たら分かるよ。その荷物が楽器だということもね」  彼はそう言って笑ったが、一方のクレイドは顔をしかめた。 「そんな顔しないでよ。ほら、果物でも奢ってあげるから」  そして、レオンスは市場の果物屋に颯爽と一人で向かった。  色鮮やかな果物を両腕に抱えたレオンスは、小走りでクレイドの元へ戻って来た。 「これ食べたら機嫌直してくれる?」  機嫌を損ねているとかの問題ではないのだが、とクレイドは反応に困っていると、レオンスに果物を一つ押し付けられた。 「あ、ありがとうございます」  クレイドは形式張って礼を述べて、それを拒否することなく受け取った。 「律儀だねえ。疲れない?」 「これが性格なので」  ***  クレイドはそろそろ足を休めたいと思い始めていた頃、レオンスが運良く足を止めた。 「店に到着!」  そう言って、左側に建つ古びた木造二階建ての建築物を指で示した。  建物の背後には青々とした草木が生い茂り、ここがだと言われなければ廃屋と勘違いしていただろう。 「……お店、なんですよね?」 「うん、酒場を兼ねた宿屋だよ。夕方着の船なら、アルマンに行く途中で一泊する必要があるからね。案外需要はあるよ」
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