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その様子を見た母は苦笑して、ため息をついた。
「んもう、素直じゃ無いわね。まあいいわ。キスしてちょうだい」
言いながら、ジョルジャは息子の唇を自分の唇で奪う。
ジュリアーノは赤面しながら、美貌の母と口付けをしていた。
「ん……っんん……っか、母さん、濃厚です……」
レオナルドはまだ気絶している……。
シャンシャンシャンシャンシャンシャン。
鈴の音がする。
ジュリアーノが窓の外を見たとき、トナカイに引かれたそりが、空を飛んでゆくのが見えた。
そのそりに乗っているのは、赤いドレスのサンタ姿のジョルジャだ。
今日は年に一回の奇跡の日。
神が、たったひとつのジュリアーノの願いを叶えてくれたのだ。
ジュリアーノは、自分の頬や唇についた口紅を、こっそり拭きとる。
その頃、床に倒れていた養父が、意識を取り戻した。
「う……ううん……。良かった、生きてる……。ジョルジャはどうした?」
「母は帰天いたしました」
ジュリアーノが落ち着いて答えた。
養父は、尊敬したように息子を見る。
「彼女をか。すごいな。一体どうやったんだ?」
「丁重に天国へお帰り頂きました」
ジュリアーノは「私とのキスで」とは言わないで、黙っていることにした。
母とのやりとりは、気絶していたレオナルドは知らない。
養父は頭を振って、部屋の惨状を見た。
まるで台風の過ぎた後のようだ。
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