予兆

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予兆

(やっと終わった!これでここに住める) 引っ越し業者のトラックの後ろ姿を見送りながら、「フゥ💨」と、大きく息を吐いた。 (しかしたったこれだけ運んだだけで25万円とは、ぼったくりじゃないか!)と、心の中で文句を言いながらも、(まぁ繁忙期だったし仕方がないか)、まだ荷物の散らかる家の中へと入った。 4月初旬、私は有給を取り、今日の引っ越しの日を迎えた。 引っ越すことを決めたものの、引っ越し先での、子供の保育園が決まらないことには、どうにも準備ができなかった。 3月の中頃に、引っ越し先の近くの新しい保育園で入園できることが分り、それから引っ越しの段取りを行ったので、そもそもこの時期に空いている業者もなく、やっと見つけた業者も、 「冷蔵庫、テレビ、洗濯機の3つだけなら運びます、その代わり代金は25万円頂きます」という信じられないような金額を、渋々受け入れ、今日という日を無事に終えることができた。 引っ越し先のこの家は、古いとはいえ、キッチンやお風呂場など、綺麗にリフォームされていて、もう一人子供が増えても充分な広さだった。なにより勤務先まで30分という近さに、私達夫婦は満足していた。 それは次の日の土曜日の出来事だった。 だいぶ日も長くなり、よく乾くようになった洗濯物を、寝室として使用している和室に取り入れ、ハンガー類を別室に置きに行き、戻ってきて順次畳んでいき、タオルを持った時だった。 「えっ⁉️」と私は声を上げ、持っていたタオルを畳みに置いた。ピンクの色のそのタオルには、黒い点が4~5個張り付いていて、よく見るとそれは蠢いており小さな虫でした。
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