叫び声

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私はやや肩で息をしながら、受けた衝撃で形の崩れた黒い塊を見下ろした。そしてティッシュペーパーで丁重にそれを包み、(決して蘇ることのありませんように!)と、強い念をこめて退魔の棒とともに、ゴミ箱に葬った。 「バルサンしたほうがいいんじゃない?」妻は泣きそうな声で、退魔の煙の使用を提案してきた。「そうだねぇ・・」私も大変だがそれしかないかと考えながら、上で寝ている子供の様子が気になり、階段を上がって行った。 あれだけの騒ぎでも、子供は何事もなかったかのようにスヤスヤと寝ていました。その寝顔に先程の戦闘の疲れも癒され、自分も寄り沿うように体を横にし、天井に目を向けると・・・ なんと!もう一体の魔物が、大事な仲間を殺した奴に復讐したいのか、こちらの様子を伺うように、天井の横の壁に張り付いていた。 私はサッと上半身をおこし、臨戦態勢に入り、近くに退魔の棒となるようなものがないかと探したが、私から発せられる殺気を感じとったのか、奴は壁をササッと移動し、長押の影に隠れしまった。 このまま奴を見逃してしまったら、枕を高くして眠れない。私は急いで階下に降り、何事か?と驚く妻には、(これ以上はお腹の子に障る)と思い、事情を告げず、押し入れから脚立と、再度退魔の棒の材料を持ち、奴の隠れた場所へ向かった。 しかしそこには既に奴の姿はなく、変わりに目に飛び込んできた光景に、私は自分の目を疑った。 長押の後ろにあるはずの壁が途中までしかなく、柱と壁の間に5センチくらいの隙間が空いており、その隙間の間には、侵入を阻むかのように石や廃材?などが置かれている。そして漆黒の闇に包まれたその奥からは、なんとも言えない不気味な冷気が漂っていた。
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