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(どおりで…)
二人してベッドに潜り込んだ昨夜。
ちゅっちゅっと、どちらからともなくキスをし、そしていつの間にか寝ていた、とか。
いつもの常葉からは想像もつかぬ失態。
それもこれも、急いで課題を終わらせ此処に来たからだろう。
なのに、はやる気持ちそのままに、恋人の家に来てみればその家主はおらず、いい気分で友人の店で酒を飲んでいる、なんて事情を知らなければ面白い気持ちにはなれない筈。
(それなのに、迎えに来てくれた、とか…)
元きた道戻る訳でも無く、佑の元へ来てくれた。
ああ…、そう…
菜箸をフライパンへと置き、くるり振り向いた佑はそのまま常葉の顔を両手で掴む。
明るい所でよくみれば、薄らとではあるが目の下に隈もある。
それがまた佑のツボを凄まじい勢いで押す材料となるのが悔しくてたまらない。
でも、それを上回る、
(かわいい…)
きぃぃゆんっとなるほどのギャップ。
あざとさすら見え隠れすると言うのに、その言動はしっかりと噛みついて離れない。
前世スッポンかよ。
「お前…何時に出るの?」
「多分…十時に着けばいい、かな」
キッチンに備え付けてある小さな時計を確認、佑はやれやれと息を吐いた。
「……い、っかい、くらいなら、やる?」
「え、す、する!」
整い過ぎている顔がぱぁっと破顔するのを見遣り、胸を押さえながらベッドに戻ろうとする佑だが、その肩をがしりと掴む常葉。
「何、しねーの?」
「するけどぉ、ちょっと指向を、変えたいなって…」
指向とは?
首を傾げた佑にゆったりと笑う常葉の眼は、濃い。
「は、あ、っ、あ、とき、わ、待っ、んんっ」
「すげ、気持ちいい…っ」
ぐいっと後から腰を掴まれ、えげつない圧で叩きつけられる。
立っていられない。
膝ががくがくと震える。
身体を支えている腕も限界だと訴えている。
けれど今此処で力を抜く訳にもいかない。
「佑大丈夫ー?」
背後から掛けられる声に苛立ちを覚えるも、止まる事の無い腰の動きに言葉にならない声しか出てこない佑はシンクをつかんでいる指に力を入れた。
『此処でしたいなぁ』
あんな言葉に頷くんじゃなかった。
ぐっと唇を噛み締める佑だが、今更だ。
まさか、二十五歳にして初めての立ちバックなんて経験するとは。
彼女とやった事ないの?と問われれば、もちろん答えはイエス。立ちバックもだが、キッチンで致す事自体が初体験だ。
『へぇ…初めて、なんだ。ふーん。僕が初体験…』
何処か嬉しそうな常葉に絆されてしまった、とか、阿保過ぎて笑い話にもならない。
「あったかーい…きもち…」
内壁を抉りながらも、佑のトレーナーの間から肌を這わす常葉の指が、こりっと硬くなった乳首を擦る。次いでぐるりと円を描く様になぞられれば、気持ち良さに後孔を締め付け、より常葉を感じてしまい、その状態で動かされてしまえば、気持ちの良い所がダイレクトに削られてしまう。
「や、ば…、佑の中すげー痙攣してる…っ」
ぎゅうっと体が密着し、胸をいじられるのはそのままに、背中から伝わる常葉の心音。
「う、ん…っ、」
「佑は気持ちいい?」
耳の後ろから熱い息と共に聞こえる声は掠れたそれ。
それだけでびくっと身体が震え、歓喜に沸くとか、もうどうしようもないではないか。
右腕がするりと胸から離れ、腹をなぞり下腹部を押す。
「ば、か、やめっ、」
そんな所を押されたら、もっと密着し体勢が崩れてしまう。しかし、そんな不安よりももっと驚愕な言葉が佑の耳に聞こえた。
「ねぇ。ここ、ボコってなるくらい、挿れていい?」
「…は?」
ここ、って…腹…?
どう言う意味だ。
たぷたぷと涙が溜まった眼を恐る恐る背後に向けると、目元を赤く染めた恍惚とした表情の常葉が唇を首筋へと近付ける。
「僕の、全部入ってない、って知ってた?」
首筋を甘噛みされるのも、刺激のひとつ。
肩や背中までも歯を立てられ、びくびくっと身体を震わせるも、佑の頭の中は危険信号がさっきから点灯しっぱなしだ。
(全部、って、嘘、だろ…)
「挿れるよ、ね、佑、聞いて、聞けよ」
「や、無理、だって、ふぁ、っ」
そんな奥なんて知らない。
自分の知らない場所を暴かれる恐怖。
ただでさえ快感が得られるとこの歳にして知った箇所。なのに、それ以上の奥とか、未知過ぎる。
「いや、まじで待って、ときわっぁ…!」
これ以上、知らなくていいのに。
胸だって、乳首がこんなに気持ち良いなんて、時折自分でも弄ってしまう程だったなんて、もう気付きたく無い。
本当はもう前だけを弄る自慰だけではイケ無くなっている。
それなのに、
「あ…はいり、そう、」
ぐ、
ぐ、
ぐっと腹を後ろに押され、その背後からは身体を押される。
抵抗しているつもりだ。
佑としては抵抗しているつもりなのだが、そんな意志とは反対に常葉のペニスを包み込む膣内はぐにぐにと奥を開き、招き入れるかのような動き。
佑の額から汗が流れ落ち、キッチンの床に水溜りを作り出す。
唇が開きっぱなしで、そこから溢れ出す唾液までもがダラダラと落ちていく。
先走りが滴っているであろう、自分のペニスなんて想像もしたくない。
苦しい、圧迫感がすごい。
息も出来ない、酸素を取り込める場所が無い。
混乱する脳が身体の機能を何とか復活させようとしているのだが、でも。
気持ち良いーーー。
ぼろりと涙がこぼれ落ちた瞬間、
ぐぽ
体内から伝わった音に、佑の眼がこれでもかと見開かれた。
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