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自分の意思とは関係無く、ぶわりと溢れた涙が大粒の塊となって落ちていく。
「ぁ…あ、っ、この、」
文句を言いたい。
けれど、そのままぐぽぐぽと奥を抉られた侭腰を動かされ、再びびくんと背を反らした。
(マジか…きもち、い、)
圧迫感は変わらない。
視界がぼやけ、目の焦点が合っていないのも理解出来る。その上、
「やっば…っ、た、すく、っ、気持ち良い?イったよね、すげぇ、うねる…っ」
上擦った声が耳のすぐ後ろで聞こえ、羞恥を煽る言葉にまた涙が溢れるも、その吐息すらも快感の一部へと変わっていくのだからタチが悪い。
「佑、キスしよ、」
「…っ、あ、ん、あ」
そして、此処に来てキスのお強請りときた。
息の継ぎ目も分からないのに、出来るもんかと言ってもやりたい。
けれど、返事どころか、後ろを振り向く余裕さえも無く、必死にシンクを掴む佑にふふっと笑う声は甘い。
次の瞬間、ばちゅ、っと激しい衝撃に目の前がチカチカと点灯した。
激しいピストンが開始されたらしいと気付く間も無く、ただ揺さぶられるだけの佑はもう前後不覚状態。
もう快感しか感じない。
弛緩した下半身がどれだけ保つか、このままだと崩れ落ちてしまうと動きの鈍くなった頭で思う佑だが、腹に当てられていた常葉の手がそろりと動き出し、小さな声を上げた。
「すげ…ここ、まで僕の入ってる…?」
ぐっと押されると中にある常葉のものがよりリアルなものに。
内側から外側からと与えられる快感はあまりにも過ぎている。
首も肩も噛まれる。
キスが出来ないからと半ば腹いせにしているのかもしれないが、やばい、これは駄目だ。
ぐりぐりと後孔を刺激されながら、未だ壊れた涙腺のままに何とか力を振り絞り、浅い息を繰り返す佑はようやっと後ろへと顔を向ける。
驚く程近くにあった、その美貌。
「たす、」
自分だけではない、赤く染まった顔に無造作に掛かった髪と流れ落ちている汗。
(本当に、ダメだろ、)
無機質な造形物じゃない、生命を感じるそれらに不覚にも締め付けを強めてしまい、顔を歪めた常葉の表情に無意識に緩く唇を持ち上げた。
「と、きわ…」
――――顔見て、キスしたい。
体内の物の体積が増える。
(マジで戻れなくなりそう…)
*****
遅刻ギリギリにもかかわらず、のんびりと教室に入って来た常葉に、クラスメイト達のざわめきが迎える。
「おはよ」
当の本人は一切そんな視線には興味等無いらしく、長い脚で室内を横切り席につくと、ふわっと大きな欠伸を見せつけた。
「はよ…って、やぎ、お前…何寝坊?」
隣の席の村山が訝し気な視線を寄越すも、その顔は若干赤い。
「何?」
「だ、って、お前いつもは髪結んでるじゃん。なのに、そのままだし…」
学校時は創作に邪魔だからと普段から結ばれている常葉の髪。
それはきっちりと一つに括っている時もあれば、緩く流す様に纏めていたり、ハーフアップや三つ編みの時もあった。
それは結んでいても綺麗だなと感じる色合いに質感は、天使の輪どころか、神が直接住み着いているのではと女の子達が憧れる程だが、それが今日はどうした事か。
さらりと肩を流れる銀色の髪。
結びもせずに、右側に流しただけのボサつきもあるそれは普通だと言われれば普通だが、しかし。
明らかにいつもとは違う。
うがった風に見れば、
「……お前、もしかしてだけど…」
ギリまで…やって、た?
「あぁ、うん」
至極あっさりとした返事は笑顔付き。
けれど、それは爽やかな物ではなく、何処かうっとりとにやついたもの。
「何で?分かっちゃった?」
「…何つーか、やってましたオーラがあるって言うか…」
「はは、何それ」
「いや、だって…」
妙に色っぽく見えると言うか、フェロモンが出ていると言うか。
他のクラスメイト達も目敏い奴は気付いているのだろう。頬を赤らめている女の子も居れば、きゃー…っと此方を見ながらコソコソと話をしている者だって居る。
野郎もしかり。
当然の如く女性には不自由しないのは周知ではあったものの、今迄こんな風に垂れ流す様な男では無かっただけに、ざわつくには十分な材料だ。
「お前…ちょっと浮かれてね?」
「そう?」
いや、360度何処から見ても機嫌の良さだって容易に分かる。
(これが…恋愛脳…)
何とも恐ろしいものだ。
授業が始まってもくるりくるりと髪を指先で遊ばせながら、時折ふふっと笑う常葉を眼がカラッカラになる程見詰める村山は信じられないと独り言ちる。
正直常葉は確かに人当たりは良い。
カリスマ性も備わっているからか、何もしなくても人が寄ってくるタイプでもある。
けれど、その反面ドライな所もあると思っていた。
『女の子は可愛くて大好き、ぎゅうってしたい』
なんて言う反面、
『あんまりベタベタされるの好きじゃなーい』
と、相手からのアクションはそう求めていない。
一度だけ電話でも、
『僕付き合ってなんて言った記憶ないけど?彼女?冗談でしょ、僕フリーだよ。日本人のそう言う察してとか、うぜー』
辛辣な捨て台詞まで吐いているのを目撃した事だってある。
情緒どうなってんの?
と、心配にもなった程だが、相手が違うだけでこうも変わるものなのだろうか。
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