毒を以て毒を制す

5/7
前へ
/93ページ
次へ
ーーぐぃ 内側から押される違和感は最初だけ。 アルコールを摂取していた為か、ちょうど良い具合に力が抜け、至る所が鈍っていたのが幸いしたらしい。 佑の窄まりが常葉の指を受け入れ、内壁を探る。 「うっ、あ、はぁ…うん…っ」 ローションのお陰もあり、痛みはそうでもないが、圧迫感が半端ない。 元々受け入れる場所では無い故、それは当たり前な事だが、それでも常葉はご機嫌に腸壁を時折指を曲げては内壁を引っ掻き進む。 男相手は初めてだと言っていたが、この迷い無い動き。 知らぬ間に一本から二本、三本と指も増やされている。 センスとはこう言う事を言うのかもしれない。 その上、ゆうるりと動かしていた筈の中指がしこりを見つけると、びくっと大きく揺れた佑に、にぃっと笑う男。 「見ぃつけた♡」 しばしそこをこりこりと指先で弄んでは抜き差ししていたが、感覚が鈍っていた佑の声に少しずつ甘さが混じりだすと、その指をすっと引き抜いた。 呼吸が戻り、終わった,等思う筈も無い。 そこまで箱入りを気取るつもりも、無知をかます気も無い。 しかし、矢張り心の何処かで無駄な羞恥がむずむずと動き出す。 少しだけ身体をずらし、背中を向ければ背後から『あれ?』と常葉の声が聞こえた。 「もしかして後ろからのがいい?」 「……うん」 小さく消え入りそうな返事だが、そっかーと笑う声に枕を握り締めた佑はついでにぎりっと唇を噛む。 「男同士って慣れてない場合は後ろからとか言うしね」 ビリっと破れる音と何かを取り出す気配。 そして、腰に触れた手があまりに冷たい、と感じた瞬間、 「じゃ、挿れるねぇ」 ぐっと押し当てられたそれが余計に熱いと思った。 「あ、あぁー…うぅ、っ、うぁー…、」 先程とは比にもならない圧迫感。 発展途上とも言えないそこに、入り込もうとする常葉のペニスもキツさを感じている。 「せま…っ」 呟く掠れた声ながらも、それでも腰を進める力。 押される圧力に促され、自然と佑の身体も前へと逃げる様にずり上がるも、それを常葉の腕が許す事は無い。 それどころか佑の腰をがっちりと掴むなり、それをぐいっと自分の方へと引き寄せ、常葉はふふっと笑みを深めた。 「あ、ぁー…やっばい、気持ち良いかも」 上擦った声が背中に吐息と共に落ちてくる。 そこからぞわぞわと伝ってくるくすぐったさにも似た感覚にひくりと喉が引き攣る佑の眼から生理的な涙が溢れるが、決して不快な物では無いと言う事は自身が一番理解出来ていた。 流石に指とは違う。 痛みはあるが、それを上回る圧迫感。 「タスクさーん?大丈夫?」 そして、温かいと感じる声。 「う、…ん、」 後ろからで良かった。 こんな情けない、ぐしゃぐしゃになって同性に抱かれている顔を見知らぬ男とは言え、見せるには抵抗がある。 常葉の動きが止まり、は、は、っと浅い息遣いだけが聞こえる中、ようやっと治まりきったのだとこちらも安堵の息を吐いた佑はもう一度枕を抱き直す。 涙が滲みて、湿っぽいそれだが縋る物が無いよりマシ。 馴染むのを待っているのかもしれない。 出来るだけ大きく動くのを注意し、息を整える佑にまた掛けられた声。 「ね、まじで大丈夫?」 あんなに軽い口調だった常葉だが、余裕が無いのか、戸惑っているのか、それとも心配してくれているのか。 少し硬く聞こえるそれ。 (ーーー何だ…) 可愛い所もあるのか…。 あまり此方が辛い表情をするのは気が引ける。 年上なのだから、もう少し余裕を持っている風にした方がいいのだろう。 そんな安易な考えしか思い付かない酔っ払いの頭。 「大丈夫、だって、」 少しだけ口元を上げて、振り向けば、思った以上に近い位置で佑を見詰めていた常葉と眼が合った。 「大丈夫…そっか、まだイケるって事だよね」 「…イケる、?」 ーーーーあぁ、そう言う事か。 ズン、 と重い衝撃は脳天まで届く。 ひゅ、っと喉から決して宜しく無い、音にならない声。 「あ、あぁぁーー…、あ、あ、あっ、」 「入った…」 成程、全部入り切って無いから、全部挿れて大丈夫? の、意の大丈夫だったのか。 チカチカと点滅する頭に浮かぶは、シャワー室でまじまじと見てしまった常葉のペニス。 通常時であれだけ眼を惹いたのだから、膨張すればもっと硬度と強度が上がり、サイズも昇進するのは当たり前ではないか。 「やっばい、気持ちい、ちんこ、まじでいい感じ、ぃ」 「うっ、あ、ああ、あ、んっ、ひ、」 言葉では無い、ただの喘ぎしか出せない。 常葉もテンションが上がったのか、途端に始まったピストン。 揺さぶられるのは身体だけでは無い。頭も物理的以外にぐらりぐらりと回転し、前後左右も分らない。 「はぁ、あ、あ、っ、とき、ま、って、」 待ってと言いたいが正直これも言葉になっていないだろう。 それどころか、早くなる抽送にぎゅうっと枕を抱きしめた佑はついでにそれも噛み締める。 意識が飛びそうになる。 けれど、 (やばい、口、寂しい…) じわっと口内に溜まる唾液が浅ましさを感じさせ、余計に溢れる涙に、また惨めさが増す。 そして、それは此方も同じでーー。 「ね、ねぇ、タスクさん、キスしよ、したいぃ」 身を屈めた常葉の声が耳を掠めた。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3015人が本棚に入れています
本棚に追加