F県の話

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F県の話

 前回も書いたが、自分と相性の悪い土地が本能で分かる、という経験を筆者は何度かしている。  面白いことに、画面越しにもそれが分かるのだ。  今回の話も、その一つ。  心霊とは何の関係もない歴史的建造物の散策動画を見ていた時。  筆者はその地をかつて治めていた初代藩主が好きなので、彼の痕跡を追う気持ちで楽しく見ていた。家族も同じ部屋で動画を見ていた。  その県の旧庁舎跡がある公園を、筆者は無性に不気味に感じたのだ。  春には桜が咲くうららかな川辺なのだが、桜の木々の合間に目に見えない淀みがある。  家族に「この公園不気味やんな」と訊いても、そんなことは無いと返される。  気になって調べると、公園の中には、初代藩主に処刑された僧侶の祠があったことを示す碑がひっそりと立っていた。  その藩に興味が薄い家族はともかく、初代藩主に思い入れのある筆者は、処刑された僧侶にとっては招かれざる客だったのだろう。
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