推して、愛して。

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 次の日も、その次の日も、美桜に会えていた。病気と知る前と変わらない日々が続いた。変わったのはバイト先に空も一緒に来るようになったことだ。今日は旅行後初めてのライブだった。ステージからは美桜と空、それにともきの姿も見えた。予想外のお客さんに一瞬驚いたが、全力のパフォーマンスを見せると、楽しんでくれているようだった。  今日は泊まりたいと言ってくれたので、ライブが終わるのを待っててくれた美桜と一緒に帰宅した。どちらからともなく手を繋ぐ。 「久しぶりだったけどやっぱり楽しかった!はぴあぷが一番だよ〜」 「ありがと。美桜ちゃんにいっぱいレスしちゃうね」  ウインクをして見せると、きゃーと手を降るそぶりを見せて二人で笑った。 「てか空くんだけじゃなくてともきくんも一緒に来てたんだね」 「うん、空経由で誘ってみたらぜひって。意外だよね」 「ね、物販まで来てくれてびっくり」 「さくらのファンがまた一人増えたね」 「おとのファンもね」 「あはは、想像通りだ」  あと何度、美桜と手を繋げるだろう。あと何度、美桜と笑い合えるだろう。日が進むたび、タイムリミットが近づいているように考えてしまう。この瞬間が一秒でも長く続くように、願うことしかできなかった。でも、神様はそんなに優しくなくて、その時は思ったより早く訪れた。
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