海の心臓

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 ――ドッ・ドッ――。  自分は人間だった。  憧れていた女性と結ばれ、幸せな生活をしていた。  ある日、妻は私たちの赤ちゃんができたのと告げた。  自分は心の底からそれを祝福した。  日に日に妻の腹は膨らんでゆく。  それが嬉しくて、何度も腹の子供へと声をかけた。  今、自分の声でお腹を蹴ったらしい。それだけで嬉しさのあまり泣いてしまった。  男の子だろうか、女の子だろうか。名前を考えるのが楽しい。どんな子でも構わない。ただ、無事に産まれてくれさえしたら。  これからは、妻と子を生涯かけて幸せにしてみせる。  この美しい人生が、ずっと続くと思っていた。
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