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だからといってすぐにまた何か飼おう、一緒に暮らそう、と気持ちを切り替えることはできなかった。
もしかしたら、このままずっと新しい『家族』を増やすことはないかもしれない。
それでも、今までずっと後ろ向きだった心が少しだけ前を向いた気がする。
モモと過ごした日々、志保は確かに楽しかったし幸せだった。ただ辛いだけの想い出ではない。そんなことさえ今の今まで忘れていた。「忘れて」いたことにようやく気づく。
死んだら決して『復活』などしない。その点においては何も変わらなかった。
志保が取り戻したのは、亡くした命ではなく楽しかった記憶だ。
あの掌に乗るような小さなハムスターは、子どもに「命の大切さ」を教えるための教材などではない。
──モモは間違いなく、幼い志保の家族だったのだ。
~END~
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