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「ママー、モモちゃんがぜんぜんうごかないの! ……どうして」
志保の半ば泣き声に近い呼び掛けに、キッチンから続きのリビングへやってきた母。
「ああ、しいちゃん。モモちゃん、死んじゃった、──天国に行っちゃったのよ。もうそんな年なのねぇ」
彼女は、ケージの中の存在を目に留めるなり悲痛な表情になった。
二年半ほど前、この家にやって来たゴールデンハムスターのモモ。……ハムスターの寿命は、約二~三年と言われている。
「どうしたら生き返るの!? しいちゃん、もっといい子にするから、だから」
死ぬ。生き返る。テレビアニメか何かで聞いた覚えのあるフレーズ。意味も把握できていないまま、志保は必死で母に訴えた。
「……それは無理よ。死んだらもう、絶対に生き返らないの。命はひとつしかないから」
苦しそうに声を絞り出して、しかし母は上辺だけの慰めで場を濁すことはしなかった。
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