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は? 何故しりを出す?
ズボンを下ろしたパパが、わたしの横でよつんばいになる。
「パパといっしょだから だいじょうぶでちゅよ~」
甘ったるい声… 最近おぼえた『イヤなヨカン』というやつがする。
その時、わたしのオムツに何かがふれた。
はっ! いつのまにかママに背後にまわられているではないか。
彼女の行動はすばやい、そして『もんどうむよう』だ。
ちゅうちょなく、わたしのオムツを一気に引きずりおろす。
こともあろうか、わたしのおしりが丸出しになってしまったではないか。
うら若き乙女に何をする!
このままではマズい。わたしの本能が恥じらいの抵抗をこころみる。
身体をひねりあおけになる。
だがそれもつかの間、軽く手をそえられただけで、勢い余ってまたうつぶせに戻される。
なんと非力なんだ、わたしは。
「だいじょうぶでちゅよ~ こわくないでちゅよ~」
パパがそうのたまったが、彼の言葉はうのみにはできない。
わたしは足をばたつかせる。
「あなた、しっかり抑えて!」
しまった、逆効果か?
パパは『じんちくむがい』だが、力は強い。
そしてママには『ぜったいふくじゅう』だ。
わたしは自由をうばわれた。
なんという屈辱だ。
「うわ! すごいかぶれ方!!」
パパがわたしのおしりをのぞき込んだ。
ママの手にはチューブが握られ、反対側の指に、半固形物質を大量にだした。
その顔はすでに勝ち誇っている。
くぅぅぅ、これまでか…
「じゃあ、薬塗るわよ」
ママの手が伸びてくる。
「これスッゴく効くってやつだから」
『まないたのこい』と化した わたしのおしりに、その半固形物質がベッチョリとつく感覚がした。
…これは!?
冷たっ!
そして、そして、
ぎゃあぁぁぁ~!!
ヒリヒリする!
いたい、いたいぞ!
わたしはたまらずオムツを脱ぎ捨て、パパの手をのがれハイハイで逃げる。
1歳児に、なんてことをしてくれるんだ!
わたしのハイハイは加速していく。
そして、そのまま勢いで立ち上がり、さらに逃げる。逃げる。逃げる。
「おぉー 走りだしたぞ」
「あら、しみたのね」
『しっぷうじんらい』の如く駆けぬけるわたしの後ろから、ふたりの声が追いかけてきた。
──この日が、わたしが初めて走った記念日となったのであった。
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