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カフェを出て、角を曲がると、そこには見覚えのあるシルエットがぼやけて浮かんだ。ギターケースを肩にかけて、壁にもたれている男の子が私の存在に気づき顔をあげる。一歩、一歩、ゆっくりだけど確実に私の元へ歩みを止めない。 ぼやけていた存在が、確かな存在になって、その瞬間に止まっていた涙が再び溢れた。 「…っ、なんで、」 「吏玖から連絡もらってた」 「……吏玖くんが」 うん、と短い返事をし、頬を伝う涙を親指で拭えば、その手で体を引き寄せた。伊織くんの心臓の音が直で鼓膜に響いている。ドクン、ドクンと規則正しくて、どこか早い。 「ひ、人が、見てるよ」 夜とはいえ、年末だ。初詣に行く人や、遊びに出掛ける人で賑わっている。 外で抱き合う男女をたまに見かけるけど、この景色をまさか私が味わうとは思わなかった。 恥ずかしくて、隠れるように彼の胸に顔を埋めた。
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