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「自分の部屋の……お気に入りの壁紙……ただ自分のベッドで横になりたいだけなのに……」
肋骨が浮き出た身体はゆっくりと蝕まれていくように不自由になり,胸には大きな穴が開いたかのような窪みができ,幼い頃に公園を走り回っていた脚はおかしな方向に曲がって動かなくなっていた。
窓から見える真っ暗な空には満点の星空が覗いたが,最後に見た月はいつだったかも思い出せなかった。
「なんなんだよ……マジでふざけんなよ……」
冷たい床が背中を焼いているような気がしたが,微かに動く身体ではそれすら確認する術もなく横になって天井から湧き出す蟲を黙って見ていた。
ボロボロと落ちてくる蟲は動かない脚や腕にまとわりつき,感覚を失った皮膚を喰い破って身体のなかに潜り込んできたが,皮膚の下で蠢く蟲を見ても何も感じなくなっていた。
「気持ちの悪い蟲だ……どこから湧き出しているんだろう……なんでこんなにたくさん落ちてくるんだ……ゲームだったら,こんなのにやられないのに」
蟲が筋肉を食い破り身体のなかを移動すると,突然指先が痙攣したかと思えば脚が突っ張り激しい電流が全身を駆け巡った。
「ガアアアアアァァァァァ! マジか!」
突然の激痛に声にならない悲鳴が真っ暗な部屋のなかで響き渡り,天井を埋め尽くして蠢く蟲が一斉に降り注ぎ,痩せ細った身体のなかへと潜り込んでいった。
「ガアアアアアァァァァァ」
激しい痛みと電流が全身を駆け巡り,後頭部の傷口から丸々と太った蟲がこぼれ落ちた。まるでこの痛みが自分が生きている証明としているかのように,醜い悲鳴が喉の奥から溢れ出した。
そして混乱する意識のなかで声が聞こえた。
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