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『何回言ったら理解かるんだ!』
『だからお前は無能なんだ!』
『同じ事を何度も言わせるな!』
蟲が頭のなかを這いずり回り,幻聴の次は幻覚が見えた。無音の世界を彷徨う自分の姿を薄れる意識のなかでのみ認識でき,まるで宙に浮いているかのようで,上も下もわならない無重力の世界を彷徨った。
眼球を蟲が齧っているせいか,激しい光が目の前で点滅し,部屋が明るいのか暗いのかさえわからなかった。
凍えるような冷たい空気のなかでカーテンのない窓が風で揺れてガタガタと音を立てた。その音に共鳴するかのように,頭の中では怒号が繰り返し木霊した。
『ふざけんな! 証拠だってあるんだよ!』
『お前みたいのがいなくなっても誰も困らないんだよ!』
『どんだけ俺たちの財布から金を抜いたんだよ! お前,マジで頭おかしいんだよ!』
同級生たちの怒りに震えた声が頭の中を埋め尽くし,冷たい視線が心を斬り裂いてゆく感覚が血管を巡り全身に行き渡った。言葉の暴力が蟲となり,震える指先から溢れ出した。
冷たい汗が背中を濡らし,震える膝を必死に抑えようと歯を噛み締め,膝を床に打ちつけたが痛みを感じることのない脚は蟲を潰しながら小刻みに震えるだけだった。
「なんなんだよ……ここはどこなんだ……なんで,こんなところにいるんだ……」
暖かい家を思い出しては涙が溢れ,熱い涙が乾いた肌をチリチリと焼いた。
「ふざけんな……なんで,こんなことになってんだよ……」
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