7人が本棚に入れています
本棚に追加
嫌な予感しかせず、考える気力さえ奪われていく。
「横に押すボタンと言えば何でしょう?
さっき言った、非常ボタンや呼び鈴でありません。
もっと頻繁に押しているかもしれませんねぇ。
まぁ、人によりますか」
狐面の男の笑いは、否が応でも答えてもらうという意思が感じ取れる。
第三のボタンは真四角の箱、横に押すボタンというワード、そして、この部屋全体も真四角である。
「……エレベーターだろ」
渋々の回答に、
「ピンポンピンポンピンポン!
正解です。
その見極める能力がもう少し早く出せていれば。
本当に残念です。
そろそろボタンの効果が現れますね。
何か最後に言い残す事はありますか」
狐面の男の口調は更に流暢になる。
「俺は……
俺は二度とボタンは押さねー! 」
桐山が叫ぶと、
「あぁ、そうそう…… 」
狐面の男に激しいノイズが走る。
同時に部屋全体が落ち始める。
「う……ヴァーーーーっ! 」
尋常じゃないスピード。
姿を成さなくなったノイズは、
「そのエレベーターにワイヤーは付いてないんで」
最後の言葉を告げて消え、その言葉を聞く事もなく、
「ぅぁぁぁーーー……… 」
桐山は部屋もろとも地下深く深く。
「………… 」
叫び声はどこにも届かず、
プシャッ
小さな小さな破壊音だけがこの場所に取り残された。
最初のコメントを投稿しよう!