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両手を上へと伸ばし、四本指を上辺に引っ掛ける。
ギリギリ床に着いている足を浮かせて全体重を乗せ、
「ふん!ふんっ! 」
ぶら下がった状態で下へ下へと重心を持っていくが、自分の体が小さく揺れるだけ。
足を地面につけ両手を離し、張っている腕の筋肉を左右の手で交互に揉み解す。
横目で宮木の様子を伺う。
「あれじゃあ、もう無理だな」
色々な体勢を試みてチャレンジしているが、第二のボタンはびくともしないようだった。
安堵を得て気合を入れ直し、
「よしっ、苦手だけど頑張るか! 」
両手を伸ばしてボタンへと飛びつく。
指が上辺へと引っ掛かった勢いを利用して両肘を曲げ、懸垂の要領で顎を上へと持ち上げる。
プルプルと震える右肘を持ち上げてボタン上面へと乗せ、滑り落ちないよう掌を思いっきり広げて押さえつける。
左肘も持ち上げ上面に押しつけ、右手と同じように掌を広げて押さえつけると、自然に上半身が持ち上がった。
「よしっ! 」
あとは両掌に力を込め、上半身をボタン中央に向けて滑らせると下半身もそれについて来た。
「ハァ……ハァ……
ほんと体力ねぇな」
日頃の不摂生をボヤきながら、片膝をついてその上へ右手を乗せ、
「よっ! 」
押し込むようにして自分の体を起き上がらせる。
立ち上がった状態でもボタンが床下へと押し込まれる様子を全くない。
「せぇーのっ! 」
思い切りジャンプしてみる。
二メートルあるボタンの高さに加え、自分の身長、更にそこからジャンプ、合計四メートルを超える高さから見る景色は少し怖かったが、
「沈め、沈め、沈め! 」
ゲームクリアへの意思がそれを上回る。
だが、何度飛び跳ね全体重を一点に集中させても、
「ハァ……ハァ……
どうやったら押し込めるんだよ」
ボタンはびくともしなかった。
「俺の……
俺の体重だけじゃあ無理ってことか…… 」
息を切らせながら下を覗く。
宮木は悪戦苦闘しているものの手応えは全くない様子。
桐山は顎に手を置き考えを巡らせ、
「……これしかないか」
腹這いになってボタンの形状に合わせて伝い降り、宮木の元へと向かった。
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