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口説く
背後の気配に気づきながらも、宮木は華奢な体をボタンに預けて押し続けている。
その背中を桐山は見つめ、
「よぉっ!
頑張ってるみたいだな」
汗の垂れ落ちる頸に声を掛ける。
垣間見える横顔は、
「傷があっても充分可愛いよな」
自然に呟かせるほど桐山ほどドキリとさせる。
「何か用? 」
冷淡な言い方に、「もっと愛想があればだけどな」心の中で付け足す。
宮木の耳元に合わせるようにしゃがみ込み、
「そのままじゃあいくらやったって無駄だろ。
手伝ってやろうか? 」
一枠を争うに相応しくない提案を持ち掛けると、宮木は作業を止めることをせず、
「見返りは? 」
短い言葉で桐山の魂胆を尋ねる。
「俺の第三のボタンを手伝ってほしい」
二重瞼の大きな目を更に開いた強い視線で桐山を振り返った表情は、
「私に復活を諦めろとでも? 」
キツイ言葉とは裏腹に、「その先に何かあるんでしょ? 」先にある希望を聞かせろと訴えている。
「二人とも復活出来る可能性がある」
桐山の囁きが、ようやく宮木のボタンを押す作業を止めさせた。
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