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「乗っただけだと駄目みたいね」
宮木が膝を屈める。
先程桐山がやっていたみたいに飛び跳ねて押し込むつもりだ。
「ま、待てっ! 」
二つ目の不安。
『自分の前に現れたボタンをとは言っていない』
宮木を口説いた台詞だが、通常はそんな事あり得ないと思う。
思いはするが、全くない話ではないと思う。
もし、どのボタンでも三つを先に押した者が勝者となるなら……
宮木が飛び降りた瞬間にボタンが下がったら……
宮木もそれを感じ取っているかも……
桐山はよろけながらもすぐに立ち上がり、膝を曲げる事もなく飛んだ。
飛び上がっている間はボタンに体重掛かっているんだろうか?
そんな疑問を考えながらも、何度も飛び続けている宮木に合わせようと、桐山も何度も飛んだ。
なかなか二人の足が同時にボタンに着かない。
当然、ボタンが押し込まれる事もない。
「同時に……同時に……
ハァ……ハァ…… 」
息を切らせながら、膝の角度、ジャンプの高さを変えて、軽やかに飛び続ける宮木に合わせようとする。
五十六回目のジャンプ。
「よしっ! 」
二人の足が同時にボタン上面を捉えた。
だが、
「…… 」
床下へと沈み込んで行く様子は全くない。
二つ目の不安は、最悪の形で払拭された。
「……もう借りは返したわよね」
宮木はボタンを飛び降り、自分のボタンへと帰って行く。
その姿を眺めながら、宮木より重いものが部屋のどこかにないか見渡す。
「一体どうしろっていうんだよ! 」
何もない。
それでも目を凝らす。
宮木がボタンの前へと到着している。
「あっ…… 」
一つの希望を見つけ、急いで体を這わせてボタンを降りた。
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