氷の女と、夏の海と、きみの告白

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 氷の女。  それが、クラスメイトの間で囁かれている、わたし緒方(おがた)雪乃(ゆきの)のあだ名だった。 『緒方さんてさ、しゃべらないよね』 『ほんと。声かけてもそっけないし、笑わないし。何考えてるのかわかんないよねー』  何を話しかけても塩対応。  教師が授業中に笑いを取ろうとふざけても無反応。  表情筋の死んだ冷たい女。  雪乃、なんて冬っぽい名前もあって、いつの頃からかそんなふうに呼ばれるようになった。  氷の女に近づこう、仲よくしよう、なんて考えるクラスメイトはもちろん皆無。  だけどわたしは、特に気にしてはいなかった。 「……友だちなんて、いらない」  一人でいる方が、わたしはずっと心地よかったから。   また、あの日みたいな思いをすることになるのなら……    なのに、何がどうして、こんなことに。
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