降る星、らんらん

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 そして神子として育てられた私たちに残ったのは、結局のところ神様だけだった。私たちは神様のために生まれて神様のために死ぬのならば、それならば私たちを律し得るのは神様だけなのだろう。つまり。 『2182年に世界を滅ぼす星が降ってくる。人でなければその星は検知し得ない。検知し得た時にはすでに遅い』  私たちはもう地球からは離れるばかりで、地上に降る一瞬の星のように輝いて果てることすらできない。あの青年も、私たちの国も、すでに私たちからは遠く離れて、手を伸ばすことも触れ合うことも、近づくことすらできないのだから。  もし私達が地上を、他の人間を見ることがなければ。  私たちの使命は星を見つけることだと思いこんで、星はもっと早く発見されたのかもしれない。けれどもきっと予言に縛られた私たちは、きっと見つけることはできなかった、そんな、気はする。  だからもう少しすれば定められた運命の通り、あの星は落下して世界を毒で満たすだろう。  最初に、あの青年がとうとうその星を見つけた。  だから私たちは一斉にその星を見た。  おそらく私たちの国にその星の存在が送信されたことだろう。もうどうしようもない距離に近づいたその星を。  そして私たちは歌った。その小さな星と、それがぶつかる大きな星の葬送の歌を。  もう少しで地球に到達して、毒を振りまき世界に破滅をもたらすその星の歌を。  みんなは星が地球に到達してしまった時点で歌うのをやめてしまったようだけど、私はその毒があの青年に届くまで、もう少しだけ、歌い続けよう。 了
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